日本政策投資銀行(DBJ)は、2020年11月19日付のプレスリリースにおいて、米国のEquilibrium社の運営する大規模環境制御型農業を投資対象とする2号ファンドである環境制御型農業第2号ファンド(Controlled Environment Foods Fund II)に対し、アジアで最初の投資家として出資することを決定し、出資契約を締結したことを発表しました。

DBJ プレスリリース Controlled Environment Foods Fund II, LLCへの出資決定について

Equilibrium Capital Management

Equilibriumは米国オレゴン州に本拠地を置き、機関投資家向けに持続可能性を追求する実物資産への投資機会創出を図る米国のインパクト投資ファンド運営企業です。現在、大規模環境制御型農業や、農業排水の処理事業等のインフラ投資ファンドを組成しています。同社は2008年にDave Chenによって設立され、米国のインパクト投資ではパイオニアの一つで、2010年に初めてB-Labによる「グローバルインパクト投資評価システム(The Global Impact Investing Rating System – GIIRS) 」で評価を受けた最初の25ファンドの1つです。

Equilibrium Capital ウェブサイト

2018年には、世界で初めて、大規模環境制御型農業に特化したインパクト投資ファンド「環境制御型食品ファンド(Controlled Environment Foods Fund – CEFF)」を立ち上げ、336百万米ドル(約350億円)を調達、その後わずか1年で100haを超える規模の温室栽培面積の運用に至りました。現在、米国を中心としながら国際的な展開を図るため、第2号ファンドを組成して更なる資金調達を行っています。

Equilibriumでは、露地栽培に比べた利点を以下のように挙げて、各段階でのインパクト創出を狙っています。生産面では、限られた農地の有効利用、土壌流出の問題がないこと、農薬の利用が減少すること、露地栽培に比べて労働環境が良いこと、灌漑用水利用を減らしながら高い生産性を確保できること、が利点として考えられています。流通・消費面では、都市近郊に立地することによって、物流コストと物流過程における二酸炭素排出の削減、鮮度を保持できることによる栄養価の高い食品の供給、食品ロスの削減、食品安全の向上などを利点としています。ファンド傘下のオペレーターに対し、こういった目標に沿ったビジネス展開を求めており、温室栽培の効率化・単収増の他に、国際的な食品安全基準(GFSI)の順守や、小売り業者や鮮度保持技術を持つ企業と連携した包材資材削減の取り組みなどを、複合的に行っています。

日本政策投資銀行(DBJ)とサステナブルな農業投資

DBJは、同ファンドへの出資を通じて、アグリフード分野におけるグローバルな動向を把握するとともに、その先進的なノウハウを獲得し、得られた知見を国内に還元することで、将来的に日本国内の農業・食品産業の更なる成長へ寄与することを狙ってます。Equilibriumへの出資案件に携わられた企業金融第3部小川卓也氏は、「本行は今後、EquilibriumとCEFF IIの掲げるサステナブルな農業に対する深い理解を通じて、食・農の分野への金融支援から持続可能な社会の実現を目指したいと考えています。」とのコメントを寄せてくださいました。

DBJは政府系金融機関として、投資案件の選択にあたっても、常に公益性がもとめられる立場であり、環境や社会に配慮したフードチェーンの持続可能性を追求するEquilibriumや、食・農の分野におけるインパクト投資の理念には親和性が高いと思われます。同行は昨年、英国のソーシャルインパクトボンドBridges Fund Management Limitedとのアライアンス契約を締結しており、今後農業・食品の業界における、新しいファイナンスのモデルづくりをリードする存在になられることを期待します。

弊社は、国際的な農業におけるインパクト投資の動向やそれが業界に与えている影響、日本の農業が直面している多様な課題と投融資の状況など、側面から両者の協業を支援させていただきました。特にこの2年ほどは、国際的にみると、農地/農業投資やフードテック/アグリテックに係る資金調達では、インパクト投資・ESG投資の重要性が大きくクローズアップされ、またそれに係る標設定や評価についての議論が進展しており、日本の政府系金融機関であるDBJがこういった動きにキャッチアップし、業界でのプレゼンスをt高められることを嬉しく思います。

日本の機関投資家と食・農の分野におけるESG/インパクト投資

日本の機関投資家では、2018年に日本生命がマニュライフ生命グループ傘下のハンコック・ナチュラル・リソースの海外農地投資ファンドに、約100億円の投資を発表したのが、初の農地ファンド案件とみられます。日本生命はプレスリリースにおいて、同ファンドが食料の安定供給や環境配慮型の農地運営等を通じて「食の安定供給」に寄与できるとして、同社のESG関連投融資枠(2,000億円)の中での取り組みと位置付けました。ハンコック・ナチュラル・リソースの農地投資は長年の歴史を持ちますが、特にここ数年は持続可能性に配慮した農地運営に力を入れており、今年1月には大規模農地投資ファンド数社とともに、Leading Harvestという農地運営のESG評価基準を策定したことを発表しています。

農地運営のESG指標を制定したLeading Harvest

日本では、ESG投資が広がりを見せるなか、インパクト投資についても徐々に認知度が向上している状況です。ただ、食・農の分野においてはまだ取り組みはわずかで、今後の課題となっています。ESGやインパクトで最も注目される食・農の分野について、ぜひ日本における注目度も向上させたいと考え、弊社も2019年末に設立した日本インパクト投資ネットワークに創業メンバーとして参画しました。引き続き、業界の発展に力を尽くしたいと考えております。