2022年1月25日に、第3回メロス農業投資勉強会「日本政策投資銀行(DBJ)食農投資及び投資円滑化法改正」を開催しました。
今回は豪華二本立て!日本の農業シーンに対して、新しい投資手法を還元することを目標に、海外の食農・森林ファンドへの一連のLP投資を開始された日本政策投資銀行(DBJ)の杉浦氏と、投資円滑化法の2021年4月改正を担当された農林水産省の大橋氏・丹野氏、西村あさひ法律事務所杉山氏にご登壇いただきました。
第3回農業投資勉強会では、日本政策投資銀行(DBJ)の食農投資と、円滑化法改正を取り上げました。
弊社代表小倉がモデレーターを務め、日本政策投資銀行杉浦様、佐藤様、穂積様、農林水産省大橋様、丹野様、西村あさひ法律事務所杉浦様、辻本様、鈴木様にご登壇いただきました。
25名を超える参加者に集まっていただき、質疑・議論で盛り上がりました。ご登壇・ご参加いただいた方、有難うございます!
日本政策投資銀行(DBJ)の食農投資
日本政策投資銀行(DBJ)は、戦後復興からはじまり、災害等の危機対応や大規模な産業成長を支える、長期のリスクマネー供給を担うため、株式会社日本政策投資銀行法に基づき設立された金融機関になります。
従来、日本では、農業分野への公的資金供給は、中小規模のビジネスを管轄する日本政策金融公庫や、農協の系統金融が担っており、DBJの農業への係りは限定的でした。
しかし、第5次中期経営計画「つなぐ、共につくる~Innovation for Sustainability~」の下で、経済価値と社会価値を両立するサステナビリティ経営を推進するなかで、日本と世界の食農分野における発展の可能性と潜在的な資金需要に改めて注目され、一連の食農投資の動きを開始されています。
DBJの役割の一つにもなっている海外のベストプラクティスの国内還元を図ることを意図し、最初に着目されたのが、グローバルな食農分野で拡大しつつある投資手法である農業・森林ファンドです。
将来的に、日本の食農産業の成長に寄与することを目指し、2020年秋から順次、環境制御型農業のインフラへ投資するEquilibrium Capital、今後拡大が見込まれるアジアの食肉や代替プロテイン等の分野にPE投資するProterra Asia、プライベートオーナーから森林を購入して手を入れてバリューアップするようなESG/インパクト森林ファンドTimberland Investment Resources LLP EUROPE等への一連の投資実行をしています。
いずれも、サステイナブル担当を置き、社会・環境課題の解決に資するESG投資やインパクト投資としても注目されているファンドです。
DBJで実際に投資実行に係られたチームを統括する企業金融第3部 杉浦 克実課長から、今までDBJで手掛けられたことのなかった未知の分野である農業・森林投資において、ファンドの評価・判断に至ったポイント、行内での理解を得るための説明の方策等を話していただきました。
DBJは国内への還元方策について今後検討をすすめられておりますが、一方で、DBJの使命として、ぜひこれを嚆矢として、国内の投資家がグローバルな食農投資に目を向ける機会創出につながると嬉しいとのことでした。
農業投資円滑化法の改正
農業法人への成長資金の供給円滑化を促進するため、2002年に策定された「農業法人に対する投資の円滑化に関する特別措置法(投資円滑化法)」。当時は、2009年の農地法大幅改正の以前で、農地を有する法人に対するファンド投資が可能になる画期的な法律でした。
ここでは、農業法人への投資資金供給を図るファンドに対し、農林水産大臣の承認を受けた上で、日本政策金融公庫から出資が得られる仕組みとなっています。
投資円滑化法は、2021年4月に改正され、農業法人だけでなく、加工・流通・販売・輸出やアグリテック、さらには海外企業(一定の条件下で)にも投資対象を広げることが可能になりました。
新しい改正の狙いと、その反響、今後の期待について、農林水産省食料産業局でご担当された大橋聡室長と丹野美佳さんに、話をしていただき、また西村あさひ法律事務所の杉山泰成弁護士から、法改正の着目点をご説明いただきました。
投資円滑化法の改正では、農業の6次産業化を支援する官民ファンドのA-FIVEが、出資先パインプラインの発掘が難航したことや、累積損失の問題で新規出資は停止されたので、その後継としても期待されています。
現在、既存の投資円滑化法ファンドや、金融機関から受け付けた申請を処理している最中で、まもなく、改正法の承認を受けて、農業法人に加えて、サプライチェーンの他のプレイヤー、海外法人等にも出資できる新しい食農投資ファンドが誕生します。
現状、投資円滑化法では、全農等の系統系金融と公庫の出資で設立されたのがアグリビジネス投資育成(株)(アグリ社)で、サブファンドも含むと現在105億円の投資累計があります。
また、地銀や地方信用組合等と公庫が出資して設立した投資事業有限責任組合(LPS)が合計18組合あり、出資合計52億円です。
三井住友銀行、SMBCベンチャーキャピタルが出資して日本戦略投資(株)が運用するSMBCアグリファンドも承認を受けており、こちらは運用総額で30億円あります。
これら、円滑化法ファンドのうち、特にアグリビジネス投資育成(株)などいくつかのファンドが申請しているほか、新しいプレイヤーで、食農に係るベンチャーキャピタル(VC)やコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)等での活用も期待されています。
これまで、農業法人へのマイナー出資だけでは、出資先パイプラインやリターンの水準に対して課題が多かったので、サプライチェーンを統合して、全体でのバリューアップを図るような投資が可能になるという面白味があります。
特に、法改正の際は、日本の国策となっている海外輸出の促進に寄与することが期待されていましたが、その後、農林水産省はみどりの食料戦略を発表しており、解釈によっては、みどりの食料戦略につながる、日本への食料供給の持続可能性を確保するような取り組みにも活用が可能という見方も示されました。
まだまだ広く知られていない制度なので、今後、先行的な投資実行でサクセスケースが知られるようになることが期待されています。
*続報:2022年2月1日には、アグリ社が第1号承認を取得しました。
メロス農業勉強会について
世界的に、SDGsやESG, インパクト投資にお金が集まり、脱炭素社会に向けた動きが加速する中で、農・食は投資家からの注目が高く、また一方で農・食の企業やスタートアップなども、そういった志向性をもった資金をどのように集めてくるかということが重要になってきました。
メロスとしても、興味を持って、グローバルな食農投資に関する情報収集を進めておりまして、その中で、ぜひ、日本でも、グローバルな視点を持った食農投資のエコシステムを構築することに貢献したいと考えるに至りました。
コロナ下ですので、手始めに、オンラインで、関係者のネットワーキングができるような勉強会を開催したいと考え、不定期5回シリーズで実施中です。幸いご好評いただいて、当初、金融機関さんを想定しておりましたが、現在、お声がけする範囲を広げているところです。ご興味がある方はご連絡ください。
第1回メロス農業投資勉強会「日本における農業投資の法的課題」
You must be logged in to post a comment.